流速と適地選定
養殖候補地における流速は、直接的なトレードオフを左右する。速い潮流は廃棄物を分散させ、酸素を補給し、生簀周辺の病気や寄生虫の蓄積を抑制するが、約1 m/sを超える流速では網が変形して生簀の有効容積が減少し、係留システムに負荷がかかる。また、魚は成長よりも遊泳による位置保持に過剰なエネルギーを消費するため、水質が正常であっても飼料要求率(FCR)の上昇として現れる。適地評価では、単一時点の測定に頼るのではなく、潮汐や季節サイクルを通じて流速計を設置するのが一般的である。これは、大潮時の最大流速が構造的・生物的ストレスに関わり、一方で停潮時の最小流速が廃棄物蓄積リスクに関わるためである。約0.05 m/sを下回る低流速の場所は、海水の入れ替わりが悪い湾と同様の自家汚染リスクがあり、0.1〜0.5 m/sの中程度の流速が、多くの生簀や延縄養殖にとって生産性の高い範囲とされる。近年、適地選定モデルでは、各パラメータを個別に評価するのではなく、流速、波浪暴露、水深データを統合した単一の適合性スコアを用いる傾向にある。これは、水質が極めて良好であっても、流速という単一の要因で養殖場として不適格になる可能性があるためである。